パラドックス(ショートショート)
どうやら私がこの学校に入るためには男性でなければならなかったらしい。
それで、身の回りのものも一新して一人暮らしを始めた。
そう広くない部屋の彩りは、今までよりもかなりあっさりしたものだ。
クローゼットの中も、ミリタリーカラーというか、アースカラーが多いな。
何故こう偽って入ったのかはわからない。
何故ならこの学校自体は共学だったからだ。
ある日、同じ授業を受けている男から告白をされた。
でも「俺、男だし、男と付き合う気はないから」と、断った。
別に嫌いなヤツではなかったが、今付き合うわけにはいかんだろ。
その後、女子から告白をされて付き合うことになる。
一応、こういう理由で、本当は男ではないということを伝えた上で。
ある日、試験というか、ゲームに参加することになる。
彼女と一緒に参加していた。
迷路を抜けた道中、例によって怪物が現れる。
彼女を捕まえられて、対抗するも自分では弱すぎて腕が立たない(丸腰だし)。
そこに同じく参加しているであろうカップルで、腕っ節の強そうな男が通りかかったので、ヘルプをお願いしてようやく助けることができた。
でも、自分はかなりショックを受けていた。
好きなヤツ一人守れないなんて、彼氏でいる資格なんかないだろうって。
その後、落ちる樽などを避けてゴール。
でも、気分は晴れない。
夜になって、願った。
時間を戻してくれ、と。
自分は彼女にふさわしい人間ではないから、どうか彼女が幸せになれるような相手と彼女を巡り合わせて欲しい、と。
気付くと、教室にいた。
彼に告白されたあの教室。
ドアのそばの後ろの席で、休み時間を適当に過ごしている。
彼が入ってくる…そこまではあの日と同じだった。
ただ、彼は自分には目をくれることもなく、真っ直ぐ彼女の元に行った。
そして、皆がいる前で告白していた。
わいわいと盛り上がる声を聞きながら、教室を後にする。
ほっとした気もするが、多少の寂しさをも残して。
<END>
2008.06.音和さいる