A.I.(ショートショート)

カウチに寝っ転がってTVを見る。
うわ〜、今週はこういう展開!?ちょっと、ちょっとちょっと!!
全くもって釘付けであった。
そんなところに、
「ロケットアタ〜ック!!」
どげしっと、物体が飛んでくる。

何事!?と思う間もなく、今までの安定姿勢は崩れ、支点・力点・作用点と習ったまんまにカウチソファは後ろへと、ありえない方向に倒れる。
倒れたソファの背から流れ落ちるようにフローリングをころころと転がり、キッチンのテーブルの足にぶつかって止まった。

「ぶわっかじゃないのぉ!!!」
反射的に目の前の人物に抗議する。
「あ、びっくりしたね…」
身体を起こしながら頭をかくその人は涼しくもそう答えた。
まるで、自分には全くかかわりのないことであるかのように。

「あんたのせいでしょ〜!もう。ダーだってびっくりしてる〜!」
倒れたままに斜め上を見ると、我が家の飼い猫「ダー」が毛を逆立ててうなっている。
あ、ベンジャミンの鉢だって倒れてるじゃないの。
「ホントだ」
蹴り上げる振りをひょいと避ける。
なんでこう、子供みたいなことを思い出したようにするかなぁ、この人は。
冷静になるとぶつけた頭がじわじわ痛んできた。

「痛い痛い痛い痛い痛い〜〜〜〜〜〜!ほら〜、早く現状復旧して。」
頭を抱えながら、ソファと鉢を指差す。
「あいあい」
だらだらと、でも一人でソファを戻してクッションやカバーを直している。
こぼれた土を鉢の中につまんで入れているけど…あそこは後で掃わかないとな。

「ダー、おいで。びっくりしたよねぇ」
私は猫を呼び寄せてよしよしする。
「みゃ〜、みゃ〜。」
「お前じゃない!愛知県民。」
「ダーって言ったじゃん、紛らわしい。」
そうなのだ。
猫の名も「ダー」だが、彼の事も「ダー」と呼んでいる。
なんとなく、定着してしまった呼称。

「もう、いいや。はい。」
私は腕を伸ばしてみせる。
「何?」
「復旧作業。元いた場所まで運んで。」
「あ〜、もう。はいはい。」
そんなこんなでありきたりの日常は続く。


<END>

2008.08.音和さいる

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