半分の心と(ショートショート)
またかよ。
怖いコトや自分に都合が悪いコトがあるとすぐこれだ。
あの小さなお嬢さんは部屋の奥深くに籠ってしまわれた。
お気楽な深窓のご令嬢だな。
だもんで今、表層意識に居残っているのはこのオレだ。
みてくれは変わらないから、客観的に見ると女装趣味の変なおっさんってなトコか。
この社会で普通に生きていくには、お綺麗な理想や清らかな純粋さだけでは到底無理だ。
適度の横着さやふてぶてしさがなくてはな。
ま、そういうもんは全部オレの担当になっちまってるわけだが。
重…ってお前本気で俺を抱く気なん?
状況説明はしたくもないので省くけどな。
あのさぁ、外見お嬢だけど、中身はオレなんですけど…。
ってわかんねえよな。
どうせお前ら、このみてくれにしか興味ねぇもんな。
お嬢?今オレこいつを殴り倒すことも出来るんですけど?
…って、それは本意じゃないのね?はいはい。
まぁな、お嬢のためならオレ、これくらいのこと平気だけどさ。
ずっとこのままじゃあ、困るんだよね。
お嬢のこと大好きだし、あんたのためになるのなら、
こうしてずっと守ってやることも出来る。
でもさ、そろそろ強くなってくれよ。
オレ、待ってるからさ。
畜生…、オレの恋って不毛じゃねぇ?
<END>
2005.6.音和さいる