月待つ森に咲く花は(ショートショート)
改めまして、こんにちは。
今日もあなたに会ったのに、なんとなく手紙を書いています。
あのね、留学の話のこと。
それをあなたからじゃなくて友達から初めて聞いた時、すごく驚いちゃった。
はじめは聞かなかったことにしようと思ったの。
あなたが隠そうとしていることだからって。
でもね、それじゃあホントに時間がないんだって気付いて。
そういえば、最近あなたの口から「思い出に」という言葉が増えたよね。
二人で歩いてきた場所で、できるだけ一緒に過ごそうって時間を作ってくれてたよね。
今までそこまでべったりする人じゃなかったのにって思って不思議だったけど。
いつかは。
それはわかってた。
ずっと「行きたい」って言ってたもんね。
でも、こんなに早いなんて思ってなかったよ。
そんな遠くに。
そのことを知った後、あなたは会うたびに「すまない」と言うわ。
その言葉を聞くたびに、私の胸はぎゅ〜って押しつぶされそうになる。
あと少ししかないのに、笑えなくなっちゃうよ。
夜になると、どうしようもなく涙が伝うの。
だって、あなたの前では泣けないもの。
もっと、聞きたい言葉は他にあるのに。
どうしたら、いいのかな。
終わりにはしたくないよ。
同じ場所にいられなくても、気持ちは一緒にいられたらいい。
「水に揺れ ひっそりと咲く 蓮の花
月明かりの下 何を見つめる」
今は静かにあなたを待ち続けるよ。
あなたの視線の先にあるものを一緒に見つめられるように。
すっきりと心が決まったら、あなたの言葉を、音楽を聞かせてください。
な〜んて、明日も会うんだけどね☆
たまにはこういうお手紙もいいでしょ?
この手紙は一緒に連れて行ってね。
いつか再び出会える日までのお守りに。
大好きなあなたへ♪(^−^)
☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆
L.T.
早く
伝えなければならないのに
伝えたことによって
君の笑顔を失うのが怖かった
…違うな
伝えることによって
君と別れる日がくるという現実を
俺は認識したくなかったのかもしれない
自分で決めたことなのに…
たとえ離れたとしても
この空がどこまでも繋がっているように
俺と君も繋がっていることを
忘れないでほしい
俺の奏でる音は
全て君へと向かっていることを…
<END>
2007.10.音和さいる&いわさきたまき