銀杏と赤ワイン。おまけにチキン。(ショートショート)

割った銀杏を口に入れてもらいながら、赤ワインを飲む。
渋皮もちゃ〜んと取ってくれる。
遠慮がちに出された指先の翡翠色を唇で挟むと、体温よりほんの少し暖かくて気持ちいい。
「やっぱりさぁ、クリスマスは宅飲みだよねぇ」
慣れきった相手とのらりくらりと時間を過ごす。
案外合うんだよ、赤ワインと銀杏。
でもその前に、塩海苔やら茹でピーやら揚げスルメやらを食し済み(笑)
こんな時までダイエットを気にしちゃいない。

「クリスマスだからさぁ、チキン欲しくない?」
私が言う。
「じゃあ、ちょっとほっか亭に行ってくるわ」
「ん。頼んますwあ、携帯持って行きな」
「うぃ、マドモアゼル」
いい加減な酔いちくれ同士の会話に文法なんて必要ない。

奴が出て行ってから4〜5分経ったかな。
携帯でも鳴らしてみるか。
オーダーも済んで、揚げあがりを待っている頃だろうか?
ベルを鳴らす。1、2…。
「もしもし?」
案外早く出たな(笑)
上ずり気味の声は、飲んでたアルコールのせい?
「好き」
それだけ言ってすぐに切った。

折り返し、ベルが鳴る。
うふふ、取ってあげないよ。
鳴りっ放しの電話は放置したまま、TVから流れるクリスマスソングを聞いている。
暖かい歌、優しい歌。
そしてちょっと切ない歌。
帰って来るまで、その感情に翻弄されてな。
から揚げ、食べながらまた飲もう。
ボタン一つだけ外して、見せつけてあげる。
ほんの少しも触れさせないでね。
さて、後はマリア様にお任せしましょう。

<END>

2007.12.音和さいる

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