まえのページ

先駆けの林家に続けと
1本が数千円もする苗木を、こぞって購入して
極端な例では、
まだ生育途中の15~20年生の林分を伐採してまで
高収益が見込めるであろう杉やひのきの苗木に植え替えたものでした。

考えてみると、林業は、今年植えて数年での収穫ということはありません。
最低25~30年、
普通40年とか50年とかがひとつのサイクルです。

その時植えられ、現在十分手入れが行き届き
目的の材が生産できるようになった山林でも
今や時代が変わり、
当時もてはやされていた
磨き丸太や絞り丸太や無節の柱材は
いくら良い材を生産しても
その需要が見込めなくなりました。

それは、平成になってから住宅の建て方が変わり
工場で生産されたプレハブの住宅が大半を占め
昔風の数奇屋(すきや)造りの純木造住宅がほとんど建たなくなったためです。


  

妻が、人工絞り丸太の皮むきをしています。
当時3才の三女も一緒です。
完成品をしまう倉庫には
たくさんの柱が並んでいました。


話がわき道にそれましたが、当時、
磨き丸太は平均約5千円(完成品・卸売値)で取引されました。

建築材は通直(つうちょく=まっすぐ、
具体的には水平な場所に置いてころころところがるもの。
止まるとだめ。)
でないと買ってもらえません。

普通の林分(実生(みしょう)苗の山林)では
約5パーセント前後しか通直な材は採れないとされています。
それで、曲がって売れない材が残るのです。

見た目には、完品(かんぴん)とさほど変わりがありません。
生産者としては、なんとかならないかと思いますが、
背割り(せわり)が入っているために、売り物になりません。
この売ることができない材が、林家の我が家には残るのです。

背割りとは、材にひび割れがいかないよう、
柱の背(木には背と腹があります)に当たる部分に
樹の真芯に達する迄、丸ノコで入れた引き目のことです。

丁度、磨き丸太に背割りを入れるための
昇降盤(しょうこうばん)という木工用丸ノコ盤があったので
この機械で、
末口(すえくち=丸太の細いほうの木口)寸法9~11センチ位の
規格外磨き丸太を真半分に割って、
さらに、両端をカットすると一面の丸みが残り
三面は角がある材の出来上がりです。



これが最初のありあわせの道具で作った
半割り丸太のベンチの材料でした。

つづく


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