おしゃべりケーキ物語

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新刊「おしゃべりケーキ物語」
著者:上野貴子
文藝書房より刊行


●エッセイ

1お正月料理は控え目に
2トリュフで深める夫婦の愛
3春色のお菓子を求めて
4待ちに待った苺姫の到着
5爽やかな風に乗って青林檎
6枇杷の実る庭で
7南国の甘い贈りものマンゴー
8大地の恵みひと粒の巨峰
9ほくほくのお月見タルト
10梨のあれこれ
11ハローウィンには南瓜のケーキ
12柊の実を灯し





★★★句の抜粋★★★


おしゃべりケーキ物語・著上野貴子


 1お正月料理は控え目に

「あけましておめでとうございます」
 と目が覚めると、今年は例年に無くいいお天気。
 大晦日から大格闘の末に出来上がっているお節料理を、テーブルの上に乗せ、
「さあ、また新たな一年の始まりです」
 お正月と言えば、まずは、お節とお雑煮が決まり物です。
 お雑煮の中に入れる切り餅は焼いたもの、汁は関東らしくお醤油味、それに野菜などの具をたっぷりと入れます。
だいたいお餅は二つで充分。御目出度い三ヶ日は、特に縁起を担いで、大奮発して海老の尾頭付きを乗せます。夫婦二人分ですから、たいそうな手間は掛かりません。
 それに、日本ならではの三段重ねのお重に、手作りの品を加えて詰めたお節料理があれば、それで、もう、どんなホテルのディナーにも負けないくらいのご馳走です。
 それでは、まず、テーブルに並んだ、それぞれを食べる前に、
「お正月ならではのお屠蘇からいただきましょう」
 お屠蘇は、その香りを味わう薬膳酒で、何となく厳かないい感じです。そして、又、別の皿には、鯛や鮪のお刺身などの数々。さらに、調理師の夫が腕を振るったローストビーフのオードブル。そして、さらなるおまけに、私の作ったご自慢のオリジナルタルトケーキ。
 これだけ揃えば、お正月は、まさしく飽食とでも言うしかありません。お雑煮を出す前に、お腹が一杯になってしまいそうです。
 そこをなんとか、腹八分目で、押えておいて、どうにかお雑煮を美味しくいただかなくてはなりません。
「せっかくの、お正月なんですから・・・・」
 これは、もう、たまらないフルコースです。
 食べても食べてもお正月の料理は尽きません。どうしたら三ヶ日の間に太らずにいられるのか、頭が痛くなるくらいです。
 兎に角、我が家では、お正月料理となると、手作りのお煮しめから、市販の紅白蒲鉾まで、毎年食べきれないくらいなのです。
 そうして、恙無く元旦から三ヶ日を過ごした後、今年はお正月そうそう、一寸した旅はじめに、千葉の鯛の浦へ出かけました。
 すると、そこでの食事が、何と、これまた飽食の代表、いくらでも好きなだけ食べれるという、あの食べ放題のバイキング料理だったのです。

「お正月の旅行だと言うのに、バイキングだなんて風情が無いわ・・・」
 そんな、気分の乗らないような、生意気なことを言いながら、私は、ついつい和食はそっちのけで、大好きなお肉料理を、そう、それも、何よりも先に、大きな一枚のロースステーキを食べてしまったのです。
 これを先に食べてしまったら、折角、海へ来たのに美味しいお刺身も、お腹が一杯で、たいして食べられません。
 かろうじて、帆立の貝殻付きの磯焼きを何とか食べて、どうにか海の味を満喫した気分になって帰ってきました。するとまた、次に私を待っていたのは、新年会の立食パーティーだったのです。 そこでは、今度はステーキばかり狙わずに、おとなしくお鮨を頂くことにしました。
 それでもやはり、そろそろこうなると、この時期によくある胃もたれの兆候です。なのに、それにもめげず、何と私は、ビュッフェで焼きたての、ローストビーフを見つけ、どうしたものやら、それを皿に二〜三枚取ってもらい、残さず食べてしまったのです。
 ましてや、お調子者の私は、まさしく調子に乗ってか、よせばいいのに、お肉に合せて、赤ワインを何杯もおかわりして飲んでしまったのでした。

「ああ、こんなバカな私、帯が苦しい」
 そして、そう、ある日の真夜中、兆候どうり苦しみ喘いで、挙句の果てに、とうとう吐いてしまったのでした。
「最悪です」
 なのに、その数日後、私には、もう一つの大パーティーが待っていました。もちろんこれも新年会です。
「さあ、大変」
 それでもめげずに、着物など着込んで、いそいそと出かけて行っては、また、たいそうなご馳走を、あれやこれやと頂いてしまったのでした。
 もうしかたがありません。胃腸薬を毎日欠かさず食後に必ず飲むしかないのです。
「だって、そのまた数日後には、大切なおしゃべりHAIKUの会の初句会がまだまだ待っているのですから、お医者さ んになんて行っていられない・・・・・」
 これだけは休まずに出席しなくてはなりません。
 こちらは、いかにもお正月らしく、お鮨屋さんでの初句会で、
「そう胃腸にはこないだろう」
 と心配ではありましたが、やはり着物など着込んで、いそいそと出かけて行きました。
 どうにかこうにか、この日は、ワインも白を一杯だけにして、お鮨は、量も決まったコースなので、少しずつゆっくりと良くかんで食べ、なんとか大丈夫だったのです。
「まあ、何と贅沢な美味しいお正月だったことでしょう」
 それでも、一度胃腸が弱ってしまったので、無理せずに、寒い時期を乗り越えなければならないと反省しています。こんな時は、十五日の小豆粥が、何よりのご馳走なんだと、初めて身に沁みて解りました。昔の人は良く考えたものです。
 来年は、いくらお正月料理だからと言って

「出来るだけ控え目に頂かなくては、品が無いなあ・・・」
 と思っています。
 そうは言っても、来年のことは、来年になって見なければ、解らないものだと諦めてはいますが・・・。



                      ふつふつと木蓋を鳴らす小豆粥   貴子

 Let's
  おしゃべりクッキング俳句


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大根・・・・

 
冬は大根が美味しい季節です。大根はそのままでも、煮たり焼いたりと調理をしてもとても食べやすい野菜です。
 日本では、春の七草のひとつ「すずしろ」としても知られ、かなり昔から食べられていたと思われます。奈良時代の文献「古事記」には歌が残されているようです。
 又、そのほとんどの種類の大根が、葉に近い方が甘く、先端の方が辛いといわれます。これは、葉に近い方が、地上の寒さで凍らないためで、先端の方は地中の虫から逃れるために辛味成分が効果的だからであろうといわれています。
 今では、誰でも葉っぱまで食べますが、この葉は保存がきかないので、買ったあとは出来るだけすぐに食べた方が、カルシウムやBカロチィンが豊富といわれています。
 冬は美味しい鍋やお味噌汁をはじめとして、煮物やお新香、お漬物、そして膾などの酢の物などにも最適です。



おしゃべりHAIKUの会(俳句)


 
お節に一品手作りの紅白膾

紅白膾

材料
 人参・・・約半分(適量)
 大根・・・約3分の1ヶ(適量)
 林檎酢・・カップに約半分
 砂糖・・・少々(お好み)

作り方
1人参と大根を細く千切りにします。

2あらかじめ用意しておいた保存用ビニール袋などでに大根と人参を入れ揉みほぐします。

3そこへ林檎酢に少々の砂糖を混ぜた酢をかけます。

4人参と大根に良く染み込むように揉み解します。

5あとはビニールの冷凍用袋などに入れて冷蔵庫で冷して出来上がり。そのまま保存します。

6お酢の分量は野菜の汁が出てからお好みでビニールから捨てたり足したり出来ますからそれぞれのご家庭でお好みの味が調節出来ます。