おしゃべりケーキ物語

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新刊「おしゃべりケーキ物語」
著者:上野貴子
文藝書房より刊行


●エッセイ

1お正月料理は控え目に
2トリュフで深める夫婦の愛
3春色のお菓子を求めて
4待ちに待った苺姫の到着
5爽やかな風に乗って青林檎
6枇杷の実る庭で
7南国の甘い贈りものマンゴー
8大地の恵みひと粒の巨峰
9ほくほくのお月見タルト
10梨のあれこれ
11ハローウィンには南瓜のケーキ
12柊の実を灯し




★★★句の抜粋★★★


おしゃべりケーキ物語・著上野貴子


 4待ちに待った苺姫の到着

 
 四月は、春もたけなわ。

「春風に、ぴったりな苺のタルトを、作ってみたいな〜〜」
 なんて思い、
「思っているだけじゃなくて、これを、本当に作ってしまうには、いったいどうしたらいいんだろう」
 と考えました。まず、最初に悩むのが、タルトの生地のクリームを、チーズクリームにするか、それとも、カスタードクリームにするかです。これは、大問題となる訳なのですが・・・いくら考えても結局は、どちらも捨てがたいので、カスタードチーズクリームの、こってりとこった、特製私のオリジナル自家製クリームを、作り出してみようと思うのでした。

「さてさて、これは、言うが易し」

「大変です」
 いつもの行き着けのお気に入りのケーキ屋さんからヒントを得た、このチーズクリームとカスタードクリームを混ぜ合わせた、カスタードチーズクリームには、手間をかけただけの、味わいがあります。この手間のかかる、少々手の込んだクリームを、お手の物にしてからは、
「我が、自己流のクリームも、プロ顔まけの、たいした腕前だ」
 と我ながら、大いに満足している次第なのです。
 しかも、ケーキの代表とも言える、苺を使うのですから、これは、やはり、カスタードチーズクリームの、こってりとこった、特製私のオリジナル自家製クリームにチャレンジしなくてはなりません。
「そろそろ春もたけなわだし」
「ここでひとつ、春らしくケーキの女王様である、苺を使っての、カスタードチーズクリームの、可愛らしいタルトケーキ なんぞを、どうしても作るぞ」
 と思い切って決意したのでした。
 さて、この苺のタルト、なんと言っても、可愛らしさの秘訣は、赤い苺。苺は、大きすぎず、小さすぎずの、甘そうな粒の揃ったものを、選ばなくてはいけません。静岡から栃木や千葉と、産地も、それはそれは、いろいろ豊富で、
「苺摘みに出かけたくなるくらい」
 とは言っても、ケーキの果物探しに、そこまでは、していられません。
 いつものスーパーで、美味しそうなパックを選ばなくてはならないのです。
 ところが、今年は、なんと、意外な失敗を、しでかしてしまい、大慌てだったのでした。 ケーキの女王様である、苺を使うのは、このところ、久かたぶりなせいだったのか、いつもなら、何の事はない苺選びで、びっくりするほど、どうにもならない見込み違いをしてしまったのです。
最後の最後に、可愛く出来上がったタルト生地の上に、
「さあ、苺を乗せましょう」
 としたところ、何と、肝心な苺が足りないのです。
 あのスーパーで選んだパックの苺が、粒もそこそこに大きくも小さくも無く、揃った苺が、どう旨く乗せて、敷き詰めようとしても、ケーキのタルト型の上に、半分ぐらいにしか、ならないのです。

「どうしましょう!」
 この自家製の苺のタルトは、ぎっしりと、丸ごとの苺が、敷き詰められたように、乗っているのが、私流の出来上がりのイメージなのに、
「ああ、それなのに、これではデコレーション出来ないし、ぜんぜん足りない」
 こんなに苦労して、カスタードチーズクリームの、こってりとこった特製私のオリジナル自家製クリームを作り、後は、デコレーションのみ、と言うところで、どうしたものか、準備したワンパックでは、とうてい足りないと言うことです。
不思議なものです。しばらく苺を使ったケーキを、作ることが無かったからといって、これでは、まるで、熊が冬眠でもしていたかのようです。久しぶりに、また春が来て、いざ作ろうとしてみると、
「何と、この有様!」
「そう言うカンのにぶりって、あるものなんですね・・・」
 しかたなくもうワンパック買いに駅前のスーパーまで、大急ぎで走るしか無いのです。他にしようがありません。私は、すぐさま、そう悟りました。そして、
「どうか、あの苺がありますように!ああ、神様、仏様、どうかありますように」
 と拝むような気持ちです。
 そうして、いつもの駅前のスーパーに、やっと辿り着き、果物売り場へ一目散に直行!!!運良く、まったく同じものが、まだあって、ほっとひと安心。
 どうなるものやらと、ドッキリしましたが、そんな訳で、やっと後からお待ちかねの苺姫が到着して、今月のケーキ作りも一段落。
「めでたし、めでたし」
 これで、最後の仕上げに、冷蔵庫で冷たく冷やして、苺姫のぎっしり乗ったタルトケーキの出来上がりです。


    つぶつぶの苺のつぶの数幾つ     貴子


Let's
  おしゃべりクッキング俳句


〜〜〜〜〜〜〜〜〜

苺のお話・・・・

 
4月の頃に美味しい旬の果物と言えば、ハウス栽培で冬から出回っている苺です。苺は本来は、春先に白い花を付け、夏に実になるのですが、この頃は、冬から春の方が実際の出荷率としては大半をしめるようです。 苺について、もう一言。この苺のつぶつぶはなんだと思いますか?このつぶつぶは、その実の種なのです。「こんなに沢山種があるのか」と驚きますが、これは本当の話です。そういえば苺の実の中には種は無いですよね。注意して苺を食べてみて、なるほど納得と思いました。







おしゃべりHAIKUの会(俳句)


 
Let’s おしゃべりクッキング!!!

★★★苺のタルト★★★

苺のタルトの材料



ビスケット 21Cm型

バター・・・・・80g
塩・・・・・少々
薄力粉・・・・・160g
砂糖・・・・80g(お好みで調節)
卵・・・・・25g約1/2個
バニラエッセンス・・3〜4滴

カスタードクリーム 21Cm型
(チーズクリームと混ぜる目安の分量)

牛乳・・・・200cc
卵黄・・・2個分
砂糖・・・40g(お好みで調節)
薄力粉・・・20g

チーズクリーム 21Cm型
(カスタードクリームと混ぜる目安の分量)

クリームチーズ・・・・100g
砂糖・・・40g(お好み調節)
プレーンヨーグルト・・・100g
ゼライス・・・ 10g以上 

デコレーション・・ブルーベリーたっぷり、アーモンドスライス、粉砂糖を適量。


ビスケットの作り方

下準備
●バターは室温で柔らかくする。
●卵はよく溶きほぐしバニラエッセンスを入れる。
●薄力粉にベーキングパウダーを混ぜふるう。
●クッキングペーパーを型に合わせて敷く。

作り方

1 ボールにバターと塩を入れ、泡立器で柔らかいクリーム状に練り砂糖を2〜3回に分けて加え、よくすり混ぜます。

2 そこにバニラエッセンスを混ぜた卵を2〜3回に分けて加えます。

3 卵が全部混ざったら木べらに持ち替えてふるった粉類をー度に加え、木べらを立て、切るようにさっくりと混ぜます。

4 ほぼ混ざったら、今度は木べらを寝かせボールの縁に生地を数回すりつけるようにして充分に粉を馴染ませます。

5 しっとりと粉がなじんだ状態で、ひとつにまとめラップに包で20分以上冷蔵庫で冷やして休ませます。

チーズクリームの作り方

作り方

1 大きなボールに熱湯を入れ、一回り小さなボールにクリームチーズを入れ熱湯の入った大きなボールで小さなボールのクリームチーズを柔らかくなるまで良く溶かします。

2 柔らかいクリーム状になったらヨーグルトを入れて、良くかき混ぜます。そこに、砂糖を2〜3回に分けて加え、更に良く混ぜます。

カスタードクリームの作り方

下準備
●薄力粉を振るって置く。

作り方

1 牛乳を厚手の鍋に入れ、砂糖の半分を加え、強火にかけ、沸騰直前まで温めます。

2 その間に、卵黄をボールに入れ、泡だて器で溶きほぐします。残りの砂糖を全部入れ泡だて器で軽く混ぜ合わせます。

3 卵黄と砂糖が混ざったら、振るった薄力粉を一度に加えます。

4 泡だて器で、粉っぽさがなくなるまで軽く混ぜ合わせます。

5 泡だて器でかき混ぜながら、沸騰直前まで温めた牛乳を少しずつ注ぎ入れます。全体を良く混ぜ合わせます。

6 万能こし器など木目の細かい籠などを通して、牛乳を温めた鍋に戻し入れます。こし器に通すことで、木目の細かな、なめらかなクリームが出来ます。

7 鍋を強火にかけ、木べらでたえずかき混ぜながら火を通します。

8 鍋底や鍋肌から固まってくるので、木ベらで充分注意しまがら次第にとろみがついて来ます。

9 大きな泡が鍋底からふつふつと沸いて来たら煮上がりです。ここまで終始強火で焦がさないように熱します。

10 表面の乾燥を防ぐため、ボールに綺麗に残さず取ったクリームにラップをかけて熱を冷まします。

カスタード&チーズクリームの混合わせ方

下準備
●ゼライスを冷水でふやかして置く。

作り方

1 作ってあるチーズクリームに、カスタードクリームを入れます。この時に、カスタードクリームがあまり熱いとよく混ざらないので注意します。

2 2種類のクリームをよく混ぜたら、そこに、ゼライスを入れます。その前にお好みで、生クリームのホイップを入れてもまろやかさが出てよいでしょう。

3 ゼライスは冷水でもどしてあったものを少し温め柔らかくして混ぜます

4 2種類のクリームがなめらかによく混ざったら、焼きあがっているビスケットの型に流し入れます。

5 最後にカッターなどで表面を平らにします。真ん中が少し盛り上がるようなぐらいがいいでしょう。

6 型にクリームを入れ、冷蔵庫で約15分冷やし、ほぼ表面が固まって来たら、ヘタを取った苺をたっぷり乗せ、もう一度冷蔵庫で、2〜3時間以上冷して固めます。

7 あとは、ジャムを薄く塗るか、ワインゼリーで、苺を固めて出来上がりです。ワインの色はその時のフルーツに合せて選びます。ワインゼリーで固める場合は、フルーツの上に塗った後、約1時間位冷蔵庫で固めて、周りにアーモンドスライスを乗せ、上から白い粉砂糖を綺麗にふるって出来上がりです。