おしゃべりケーキ物語

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新刊「おしゃべりケーキ物語」
著者:上野貴子
文藝書房より刊行


●エッセイ

1お正月料理は控え目に
2トリュフで深める夫婦の愛
3春色のお菓子を求めて
4待ちに待った苺姫の到着
5爽やかな風に乗って青林檎
6枇杷の実る庭で
7南国の甘い贈りものマンゴー
8大地の恵みひと粒の巨峰
9ほくほくのお月見タルト
10梨のあれこれ
11ハローウィンには南瓜のケーキ
12柊の実を灯し




★★★句の抜粋★★★


おしゃべりケーキ物語・著上野貴子


 6枇杷の実る庭で

 
 まだ天気予報では、梅雨入りを迎えず、どうにも、はっきりとしない空模様の、六月の頃・・・枇杷の実が、都会のスーパーの、棚の上の方に、何時の間にか並び始めると、
「どうしてだか、まるで、タイムトンネルにでも、迷い込んでしまっているかのよう」
 そんな、不思議な気持ちになります。
 枇杷の実の可愛らしい卵のような姿が、幾つも、綺麗に、パックや箱に、並んでいると、何となく、懐かしさと言い知れぬ哀愁を感じ、子供の頃を、ふと、思い出してしまうのです。
 そうして、忘れかけていた記憶の片隅にある、時のトンネルに、何故だか迷い込んでしまうのです。
 そうなんです。そういえば、昔、私の田舎の家の庭には、よくある植木に混じって、桜やつつじ、パンジーや鳳仙花など・・・自然に咲く花々が色とりどりに、季節を追って、次々に咲くいていました。
 その中で、花が実を付けるのは、殆ど秋が多いのですが、この枇杷の実は、珍しく、さくらんぼうと、ほぼ同じ夏の頃に、よく、その実る姿を、見かけたような気がします。
 細長く伸びた、枇杷の木に、初夏の風が、優しく吹き始める頃になると、確かに、可愛らしい実がなっていたように、思い出されるのです。
 そして、その庭で、まだ中学生だった私は、裏山の壁に向かって、ひとりでテニスの壁打ちをしていたことを思い出します。
 あまり上手なテニスプレーヤーでは無かったのですが、わりとお転婆娘だった私は、いつも夕方になると、人知れず隠れた特訓のような気分で、その裏庭の壁で、当時、テレビで人気だった、アニメのエースを狙えという番組の、お蝶婦人か岡ひとみといった、テレビのヒローインにでもなったつもりで、一度凝り出すと、暫くは、とことんそんな気になりきってしまい、殆ど毎日、学校から帰ると、すぐに壁打ちでした。
「ランダを何回続決けられるか?」
「毎日、声を出して数えながら、決して途中で諦めない」
 続くかぎり、その数は増え続けていきました。
 意地っ張りな性格は、その頃からなのかもしれません。そんな、乙女の夢物語を、つい、思い出してしまう。懐かしい枇杷の実。
 今では、田舎の家も、昔とは違い、裏の庭は物置になってしまっていますが、それでも、そんな裏山の茂みの何処かに、あの頃の、裏庭の壁が、そのままあって、テニスボールの音がして来るような、そんな気がします。
 懐かしい思い出とは、そんな心の片隅のアルバムに、いつまでも変らずにあるものなのですね。
 今月は、そんな懐かしい枇杷の実を、丸ごとタルトケーキに乗せようと決め、そっと皮を剥いてみました。ところがこの枇杷の実には、確かに種があったはずなのです。種無し枇杷とは聞いたことがありません。しかも、この枇杷の実の種は、柿の種に似た感じで、ころころ丸くて厚みがあり、実の真ん中にコロリとその存在を誇示しているかのように、堂々と固まっているのです。
 まず、包丁を入れると、この種にぶつかります。
 これはもう仕方が無いのです。そんな大きな種があるのに、それを、丸ごと乗せる訳にはゆきません。
 丁寧に、二つに切って、中の種を取ることにしました。
 ギッシリと詰まった種は渋皮のような薄い膜を付けていますが、これも、出来るだけ取って、あとは、そのままの実を、綺麗に並べて、オーブンで焼き上げれば、出来上がりです。
 美味しそうな、香ばしさは、日本独特な、レトロな、枇杷の実と、モダンな、タルトケーキとの、組み合わせにより、一層ひきたてられて、スポ魂の思い出話も飛び越え、時を越えて、どこまでも飛んで行ってしまいそうな、例えようの無い、懐かしさと、甘さとが、程よくマッチ。
 そんな、今月の枇杷の実タルト。季節の果物のケーキとしては、
「間違い無く、今月も、バッチリ!」
 お菓子の材料としても、最近では、また、そのビタミンの豊富な栄養価の高さが見直され、手に入り易くなって来ています。
 それでは、いったい、俳句の句材としては、
「いかがなものでしょうか?」
 都会では、なかなか味わえない、レトロな季節感がありますから、夏の句材選びとしても、なかなかいい風情のある果物だと思います。きっと、どんな方にも、文句無しでしょう。


                 枇杷の種コロリと宵の台所    貴子


 
Let's
  おしゃべりクッキング俳句
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

果物は比較的低カロリー。

 果物は食べ過ぎるとよくありませんが、一般的な御菓子やデザート類のカロリーに比べて、同じ量を食べてもそれほど高カロリーにはなりません。
 又、果物に含まれている「果糖」は普通の「砂糖」よりも脂肪になりにくいといわれています。しかも甘味の度合いが「砂糖」よりも強いため少量で甘味を感じます。くだものは冷すと更に甘味を増すため、夏にはよく冷すと、とても美味しいです。




おしゃべりHAIKUの会(俳句)
 

★★★枇杷の実タルト★★

 

枇杷の実タルトの材料

 

 

 

ビスケット 21Cm型                                           

 

バター・・・・・80g                             

塩・・・・・少々

薄力粉・・・・・160g

砂糖・・・・80g(お好みで調節)
卵・・・・・25g約1/2個     

バニラエッセンス・・3〜4滴 

 

アーモンドクリーム 21Cm型 

 

バター・・・・80g

砂糖・・・・・80g(お好み調節)

卵黄・・・80g

アーモンドパウダー・・・100g                         

  ベーキングパウダー・・・小匙1/

 

デコレーション・・・・枇杷の実を丸ごと5〜6個と、他にアーモンドスライスと粉砂糖と杏ジャム。

 

ビスケットの作り方

下準備

●バターを室温で柔らかくする。

●卵はよく溶きほぐしバニラエッセンスを入れる。

●薄力粉とベーキングパウダーを合わせふるう。

●クッキングペーパーをタルト型に合わせて敷く。

 

作り方

 

1 ボールにバターと塩を入れ、泡立器で柔らかいクリーム状に練り砂糖を2〜3回に分けて加え、よくすり混ぜる。

 

2 そこにバニラエッセンスを混ぜた卵を2〜3回に分けて加える。

 

3 卵が全部混ざったら木べらに持ち替えてふるった粉類をー度に加え、木べらを立て、切るようにさっくりと混ぜる。

 

4 ほぼ混ざったら、今度は木べらを寝かせボールの縁に生地を数回すりつけるようにして充分に粉を馴染ませる。

 

5 しっとりと粉がなじんだ状態で、ひとつにまとめラップに包で20分以上冷蔵庫で冷やして休ませる。

アーモンドクリームの作り方

 

下準備

バターを柔らかくする。

卵をとき、バニラエッセンスゼ適量入れます。

薄力粉をベーキングパウダーと混ぜ、振るって置きます。

 

作り方

 

1 バターを溶かし練って、塩を少々ふるって泡立器で混ぜ、砂糖を2〜3回に分けすり混ぜ、よく混ざったら卵をやはり2〜3回に分けてよく混ぜます。

 

2 アーモンドパウダーを加え、泡立器でクリーム状になるまで、充分に混ぜ合わせアーモンドクリームの生地を作ります。

 

3 冷やした生地をタルトのビスケット型に合わせて敷き、底にホークで穴を空け、その中にアーモンドクーリームの生地を流し入れ、カードで表面を平らにします。

 

4 枇杷の実は種を取りお好みの形に切り、生地の上に並べます。あまり小さく切るより、なるべく二つに切る位がいいでしょう。

 

5 型ごと170℃のオーブンで約40分金網で焼きます。

 

6 焼きあがったら杏ジャムを塗り周りにアーモンドスライスと粉砂糖をまぶし、枇杷の実のタルトケーキの出来上がりです。