おしゃべりケーキ物語

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新刊「おしゃべりケーキ物語」
著者:上野貴子
文藝書房より刊行


●エッセイ

1お正月料理は控え目に
2トリュフで深める夫婦の愛
3春色のお菓子を求めて
4待ちに待った苺姫の到着
5爽やかな風に乗って青林檎
6枇杷の実る庭で
7南国の甘い贈りものマンゴー
8大地の恵みひと粒の巨峰
9ほくほくのお月見タルト
10梨のあれこれ
11ハローウィンには南瓜のケーキ
12柊の実を灯し




★★★句の抜粋★★★


おしゃべりケーキ物語・著上野貴子


 8大地の恵みひと粒の巨峰

 立秋も過ぎると、食欲の秋がやって来ます。
秋と言えば、食べ物なら何でも美味しいのですが、夏のトロピカルフルーツとは、また違って、海の向こうからやって来る果物よりも、日本の春から夏にかけて、色とりどりに咲いていた花が、実になり、甘く熟し、そして、食べ頃を迎える季節なのです。
 その中でも、葡萄の実は、初秋のまだ残暑が厳しい頃から美味しそうに、お盆の船の飾りや、スーパーの店先などに、一斉に出回り始めます。
 小粒の葡萄から、マスカットや巨峰と、種類も色々、見ているだけで楽しくなります。
 よく暦と、実際の季節が合わないので、月々のお題は難しいと言いますが、気を付けていれば、そんなことも無いのです。
 以外と、日常のちょっとしたところで、今でも暦は生活に役立っています。
 立秋の頃だと、紛らわしいお題の季語としては、花火や、朝顔の花、そして、この葡萄の実も、そんな季節の変わり目に、よく出されるお題でしょうか。
 案外、茄子や南瓜の野菜よりも、葡萄は、実りの秋をいち早く教えてくれる果物なんですね。
 葡萄はまだ初夏の頃だと、日本ではよく白い袋を被っている姿を見かけます。葡萄の栽培で有名な、山梨の勝沼あたりでも、一面の葡萄畑が、そんな、白い帽子を外すのは、いったい、いつの頃なのでしょうか?
 いい香りのする葡萄棚で、夏休みに葡萄のもぎ取りをしたことを、今でもよく覚えています。

「勝沼の葡萄は、日本では最高に美味しい」
 と山梨生まれの父は、よく言っていました。未だに父は、勝沼で取れた葡萄で作った、地酒ならぬ地ワインが大好物です。
 最近は、高速道路が便利になって、勝沼を通らずに、千葉から父の生家である境川の向昌院と言うお寺まで、インターチェンジを降りずに行けるようになってしまい、すっかり勝沼の葡萄園には立ち寄らなくなってしまいましたが・・・・。
 山梨は、誰でもご存知の通り、日本一と言われる葡萄の産地ですから、昔は、向昌院のお寺の回りにも、葡萄畑が、広がっていて、八ヶ岳を目の前にした田園風景は、まさに、絶景でした。
 この境川という村は、今では市になっていますが、その昔は、俳句の大家であった飯田蛇笏先生のふるさとであり、その生家は、山麓の谷間にひっそりと残されています。
 私が俳句に興味を持ったのも、そんな父の父、お坊さんであった私の祖父が、この飯田蛇笏先生のもとで、俳句を嗜んでいたということもあるのかもしれません。
 そんな、思い出深い葡萄を、今月のケーキに、どうにかして使いたいと思うのですが、困ったことに、種無しでなければ、お菓子には旨く利用できません。
 小粒の普通の葡萄では、そのままが一番美味しいだろうし、かと言って特に巨峰には、殆どの品種に種があります。
 種をひとつずつ取り出すのに、半分に割ってしまっては葡萄の甘みよりも、酸味が多く出てしまい、固めるのに一苦労です。せっかくケーキにするのですから、この際、巨峰をどうにか使いたいと、あちこちでスーパーを覗いては、

「種無し、種無し・・・・・」
 と心で念じながら、何日かの間探し歩いて、やっと、種無しの巨峰を見つけました。
「巨峰にも種無しって、探せばあるもんなんですね」
 これはしめた者です。一粒一粒を丁寧に、そっと形が崩れないように剥いて、冷たく固めたケーキの上にぎっしりと並べれば、大した豪勢なケーキです。
 葡萄は、干したり、缶詰めのマスカットなどを、アイスクリームにしたりすることが、よくあるようですが、そのまま一粒一粒の皮を剥いて、並べるというのは、種無しで大粒の巨峰ならではです。
 生地にはチーズケーキを使い清涼感を出し、その中にも下味に、巨峰をそのままつぶして、滑らかな100%果汁のジュースを作り生地に混ぜ、ほのかな紫色の巨峰の味を堪能出来るように工夫して見ました。
 この味が、また、憎い色合いと、こくを出したかと思います。
 しかも、その上に乗せる巨峰は、苦心して見つけた種無し葡萄。それをそのまま丸ごと綺麗に、ぎっしりと並べてしまい、まさしく贅沢な初秋の果物のケーキが出来上がりです。
 ひとつぶひとつぶの葡萄の実に、天からの恵みと大地の命の息吹を感じながら季節を味わう。まさに絶品です!

「世界中で、ただ一つのケーキが出来た」
 と私は、自ら、満足しているしだいです。
 今年は、何時もの年よりも、芸術祭にご縁のある年で、この芸術の秋に、とうとう私は、トリコロールコレクション祭という芸術祭で、金賞を受賞すると言う幸運に恵まれました。
 その、金賞の作品も、秋の味覚、懐かしい葡萄を詠んだ句だったのです。
 そんな訳ですから、今度の葡萄のケーキは、しっぱいなど無いように、重々気を付けて作ったつもりです。
 少々手作り風の、ボリュームのあるケーキですが、まあこれも世界中で、ただ一つだけしか作れない、オリジナルの手作りケーキだと思えば、たまらなく美味しいものなのです。
 今回は、金賞受賞の快挙に免じて、葡萄そのものの旨みが生かされていたということでケーキの方も、大成功だったとしましょう。



                   葉に隠れ風の手枕葡萄の実  貴子

   (日仏交流150周年記念トリコロールコレクション祭アートラベル金賞受賞作品)


 

 
Let's
  おしゃべりクッキング俳句


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ぶどう

 ぶどうは古くは紀元前のエジプトの古代壁画にも描かれているくらい、かなり昔から栽培されていた様です。
 日本には中国から伝えられたようで、このぶどうは疲労回復や視力改善効果もあり、がん予防にもいいとか・・・・。
 山ぶどうも時には見かけますが、多くは果物として食用に栽培されています。
 エジプトやヨーロッパがその祖先と言われていますので、その房の葉はモダンなおしゃれな感じがします。ぶどうは房はへたのある上の部分の方が甘く、果皮の色は濃いほうが甘い味がするとされています。
 房の下の部分から上へ食べていくと甘みがじょじょに強くなって美味しく食べられます。

おしゃべりHAIKUの会(俳句)

Let’s おしゃべりクッキング!!!

★★★葡萄のケーキ★★

葡萄のカップケーキの材料


ミニカップ5〜6個分

   
チーズクリーム・・・・100g
  砂糖・・・・・80g(お好み調節)

  プレーンヨーグルト・・・100g
  ゼライス・・・・10g以上
  冷水・・・少々。
  葡萄・・・・・一房 

                                  

デコレーション・・・・皮を剥いた巨峰の葡萄一房の約半分。杏のジャム適量。

葡萄のカップケーキの作り方


下準備


冷水にゼライスを溶かして置く。


作り方

 

1 巨峰の皮を剥き半分ぐらいをミキサーでつぶし果汁100%のジュースを作ります。

 

2 クリームチーズをボールに取り、柔らかく溶かし、砂糖をお好みで入れます。                                   

 

3 2に1を加え、そこにヨーグルトを入れて良く混ぜます。

 

4 滑らかになるまで良く混ぜ、そこにゼライスをいれます。ゼライスは少し火にかけて柔らかくもどしてからの方が上手く滑らかに混ざるようです。

 

5 良く混ざったらカップ5〜6個に生地を流し入れ、10分程冷蔵庫で冷します。

 

6 生地の表面が固まったら皮を剥いた葡萄の半分を丸ごとそれぞれに乗せ綺麗に並べて、今度は2〜3時間以上冷蔵庫で固めて出来上がりです。