おしゃべりケーキ物語

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新刊「おしゃべりケーキ物語」
著者:上野貴子
文藝書房より刊行



●エッセイ

1お正月料理は控え目に
2トリュフで深める夫婦の愛
3春色のお菓子を求めて
4待ちに待った苺姫の到着
5爽やかな風に乗って青林檎
6枇杷の実る庭で
7南国の甘い贈りものマンゴー
8大地の恵みひと粒の巨峰
9ほくほくのお月見タルト
10梨のあれこれ
11ハローウィンには南瓜のケーキ
12柊の実を灯し





  

★★★句の抜粋★★★


おしゃべりケーキ物語・著上野貴子


 10梨のあれこれ


 梨の実は、秋の恵みの代表です。
 ここ世田谷あたりでも、多摩川沿いで、今でも多く栽培されていて、よく無人の果物売りの小屋が、畑の前に立っているのを見かけます。
 他の野菜と一緒にダンボール箱や、新聞紙にくるまれて、無造作に置いてあります。大切に育てられた梨の中から、選り分けられて、少し形が悪かったりするのでしょうか。たいした値段も付けずに、どれでも百円とかなんとか書いた札があり、銭箱が、置かれています。
 都会の住宅街にしては、ほのぼのとした田園風景ですが、なんだか、置かれてある野菜や果物が、ちょっと意地らしい切ない気持ちにもなります。
 それでも、ふと幾つも美味しそうな梨の実が並んでいるのを見ると、

「自然の恵みだな〜〜」
 と感じたりして、

「ちゃり〜〜ん!」
 と小銭を入れて、一つ買って帰りたくなったりします。
 現代人の私でも、百円で何が買えるか、こんな時に、しみじみと考えてしまったりします。
 このところの不景気で、百円ショップは大流行。日曜品から雑貨や消耗品など、さまざまな商品が扱われていて、その品数も年々増え続け、豊富になり、とても便利です。
「誰だって、いい物を安く手軽に買いたい」
 と人間の欲求は、止めども無く我がままで、そのうち、自分の家から一歩も外へ出ることなく、インターネットで、何でも百円で買える時代が来るかもしれません。
「まあ、そこまで何でも百円は無いか!」
 そんな、漫画や映画のような未来は、まだまだ計り知れないとして、兎に角、ここ世田谷では、どれでも百円の無人の青物屋さんの小屋を、嘘いつわりなく、今だに見かけるのです。
 こちらは、まだまだ微笑ましい無人の店で、近所の梨の取れたてにも、そこそこイッパシに、いろいろな品種があるようなのですが、よく見ると私の田舎の千葉でも美味しいと言われている、皮の色がわりと濃いめの茶色の品種で、二十一世紀とやら言う品種が、青物百円ショップでも、瑞々しく最高に美味しそうです。
 ところが、いざ、お菓子作りの材料となると、こうした国産の梨よりも、西洋から入ってきた洋梨の方が、どうしても人気が高いようなのです。
 最近では、この洋梨も従来から良く使われていた、缶詰では無く、生のままで、どこのスーパーでもよく売られています。
 意外と何種類もあって、秋になると果物売り場には山積みの国産の横に、必ず長細い形をした洋梨が並んでいます。生のままでは、なかなか酸味も強い果物ですが、少し煮込んだり、ワインでコンポートにしたりすると、とっても美味しいおしゃれな梨です。
 お菓子作りには、もう缶詰より、生のままの洋梨のほうが、ずっと美味しいこと間違いなしなのです。
 洋梨は、その形が、瓢箪のように、細長くて、どことなく日本人には、愛嬌がある形なので、すんなりと馴染むのかもしれませんね・・・・。
 この洋梨は、これまでは普通、ラフランスと横文字の名前で呼ばれていました。
 洋梨と言うよりも、ラフランスの方が、おしゃれな感じがするせいかもしれません。
 林檎や桃のように、その果物の旨みをそのまま生かすと、とても美味しいこのラフランス。ブルーベリーやオリーブのように、そのうちには、日本でも多く作られるようになるといいです。
 地中海の、青い海の見える、小高い丘のラフランス畑で咲いている、可憐な白い花を、ここ日本の多摩川の小高い丘の梨畑でも、もしかしたら、見る日が来るかもしれません。
「なんだか、とっても素敵ですね」
 という訳で、この秋は、国産洋産こだわらずに、生の梨を材料に、美味しいお菓子を作ってみようと思うのです。
 きっと国境を越えたヨーロピアン気分になれること間違い無いでしょう。南フランスにでも行った気分を味わえるかもしれません・・・・。


           
                       焼きタルトラフランスのドレス乗せ  貴子


Let's
  おしゃべりクッキング俳句


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 梨は、日本で栽培されている果物の中でも、最も歴史が古く、弥生時代にはすでに食べられていたそうです。
 また日本書紀にも栽培の記述が残っていて、江戸時代にはすでにその品種も増加しています。
 現在のような甘味のある果肉の柔らかい梨は、明治以降に発見されたり品種改良されたものです。
 おいしい梨は水分も豊富で、食物繊維が比較的多く、便秘予防に効果的です。
 日本の梨には「赤梨」「青梨」があり「赤梨」は果皮が茶色いもので、「青梨」は果皮が緑色の梨です。洋梨は、日本では栽培しずらいため、定着せず、昭和後半頃から広まったようです。

 
おしゃべりHAIKUの会(俳句)
 

Let’s おしゃべりクッキング!!!

★★ラフランスのタルト★★

ラフランスの焼き菓子タルトの材料



ビスケット 21Cm型


バター・・・・・80g

塩・・・・・少々

薄力粉・・・・・160g

砂糖・・・・80g(お好みで調節)
卵・・・・・25g約1/2個     

バニラエッセンス・・3〜4滴 

 

 アーモンドクリーム21Cm型 


  バター・・・・・80g

塩・・・・・少々

砂糖・・・・40g(お好みで調節)

卵・・・・・80g

バニラエッセンス・・2〜3滴

アーモンドパウダー・・100g           

ベーキングパウダー・・小さじ1/

 

デコレーション・・・・ラフランス(洋梨)丸ごと数個。

杏のジャム適量。

ビスケットの作り方

下準備

      ●バターを室温で柔らかくする。

●卵はよく溶きほぐしバニラオイルを入れます。

●薄力粉とベーキングパウダーを混ぜふるう。

●型にショートニングを薄くぬるり、クッキングペーパーをタルト型よりひとまわり大き く切り、周囲に切り込みを入れ型に合わせて敷く。

作り方

1 ボールにバターと塩を入れ、泡立器で柔らかいクリーム状に練り砂糖を2〜3回に分けて加え、よくすり混ぜる。

 

2 そこにバニラエッセンスを混ぜた卵を2〜3回に分けて加える。

 

3 卵が全部混ざったら木べらに持ち替えてふるった粉類をー度に加え、木べらを立て、切るようにさっくりと混ぜる。

 

4 ほぼ混ざったら、今度は木べらを寝かせボールの縁に生地を数回すりつけるようにして充分に粉を馴染ませる。

 

5 しっとりと粉がなじんだ状態で、ひとつにまとめラップに包で20分以上冷蔵庫で冷やして休ませる。


アーモンドクリームの作り方


下準備

●バターを室温で柔らかくする。

●卵をときほぐしバニラエッセンス2〜3滴入れる。

●アーモンドパウダーをふるっておく。

作り方

  1 バターを溶かし練って、塩を少々ふるって泡立器で混ぜ、砂糖を2〜3回に分けすり混ぜ、 よく混ざったら、卵をやはり2〜3回に分けてよく混ぜる。

 

2 アーモンドパウダーを加え、泡立器でクリーム状になるまで、充分に混ぜ合わせ生地を作ります。

 

3 タルトのビスケットを型に合わせて敷き、その中に生地を流し入れる。カードで表面を平らにします。

 

4 ラフランスを剥き月型状に切り生地の上に並べる。

 

5 170℃のオーブンで、約40分金網にのせて焼きます。

 

6 焼きあがったら、アンズのジャムを上にかるく塗り、ラフランスのタルトの出来上がりです。