おしゃべりケーキ物語

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新刊「おしゃべりケーキ物語」
著者:上野貴子
文藝書房より刊行

●エッセイ

1お正月料理は控え目に
2トリュフで深める夫婦の愛
3春色のお菓子を求めて
4待ちに待った苺姫の到着
5爽やかな風に乗って青林檎
6枇杷の実る庭で
7南国の甘い贈りものマンゴー
8大地の恵みひと粒の巨峰
9ほくほくのお月見タルト
10梨のあれこれ
11ハローウィンには南瓜のケーキ
12柊の実を灯し





★★★句の抜粋★★★


おしゃべりケーキ物語・著上野貴子


 2トリュフで深める夫婦の愛

二月とは、春の始まり。

すべての生き物が、大地の眠りから目を覚ます頃です。
 そんな二月と言えば、何と言っても真っ先に思い浮かべるのが、バレンタインデーです。

このバレンタインデーには、必ずチョコレートをプレゼントしますが、

「何か、特別な謂れでも、あるのかしら」

と不思議に思い、辞典で調べてみたところ、なんでも『二月一四日の、この日は、聖バレンタインと言うローマの司祭様が、殉教死された大切な記念日にあたる』ということだそうです。

そうして、この頃になると、冬の間眠っていた鳥達が、野山のあちこちで、交尾を始めるところから、愛する人に贈り物をする。特に普段は慎ましやかな女性から男性への愛の告白の日として、世界各地へ広まったようです。

日本では一九五八年頃から大流行となったとされています。

ところが、このバレンタインデーに、なぜ、チョコレートをプレゼントするのか、その理由は、今だに解らないようなのです。

時代や国柄も変り、この頃では、義理チョコから友チョコやマイチョコなど、さまざまな形で、相手のいるいないにも関わらず、

「ただ、ただ、チョコレートを食べれば、それでいいのか」

と言うような、そんな風潮もあるようです。

それでも町の商店街やデパ地下などで、たいそうな飾りつけをしたり、高価なプレゼントを付けたりした商戦を横目に、そんなこんなの大騒ぎを避けて、今でも、古き良き時代の頃のように、こっそりと、愛の告白に、この日を使うような、可憐な大和撫子のような少女を、偶然に見かけたりして・・・・。
「やっぱり、可愛い少女の頃って、今も昔も変らないな・・・・」

制服のポッケにこっそりと入る位の、小さなチョコレート売り場の列に、一人で並んでいる姿は、何とも憂い憂いしい限りです。

「いつかは憧れの彼に、思いが通じますように」

と普段は、言葉では言えない恋心を、何とかチョコレートに託す。青春のほろ苦い一ページです。

一時代前までは、大人のロマンと言えば不倫でした。パイポのコマーシャルが大流行で、猫も杓子も不倫の一つや二つでびくびくはしていられない。

不倫は大人の女性の、まるでおしゃれのようなものとなっていましたが、この頃では、私自身が、バツイチで、しかも再婚してしまったせいでしょうか?以前ほどの不倫ブームとは感じません。

義理チョコにこじつけて、上司に色目を使うOLの噂にも、そろそろ世間の風が飽きてしまったのでしょう。

いつまでも、せめて気分だけでも若々しくしていたい、私達夫婦者にも、このバレンタインデーは、倦怠期対策の一つでもあり、日頃の愛を確かめ合うための、外交辞令とでも言いましょうか?普段面倒な夫への点数稼ぎのひとつとなっています。

と言う訳で、ここ数年は、丸い卵のような手作りチョレート・トリュフが、私から夫への愛の証となっている訳なのですが、可愛い小さな丸いチョコレートを、これまた可愛い箱にラッピングなんぞしたりしていますと・・・・・・

「気分は、はるか昔の中学生」

オバタリアン寸前の私も、案外と楽しく、一時の夢を見ているような気持ちです。

このバレンタインデーとやらは、そんな魔力のせいでしょう。未だに、何故チョコレートでなければならないのか、その真相は、解らないままに、誰もが辺りを省みず、ピーチクパーチクと、囁きあう窓辺の雀のように、愛を育むいい口実にしていることは、間違いありません。

今年もまた、来年のバレンタインデーの日が来るまでの一年間。

「二人の愛が、可愛い巣箱のような愛の巣で、どうにか覚めることなく過ぎますように」

と願いながら、

「こればっかりは、誰にも解らない」

「運命の女神様の、ご機嫌しだいでしょうか・・・」

無事に来年もまた、このバレンタインデーの日を、迎えられることを、ただ、ただ、祈るばかりです。

 

 


          バレンタインデー春禽の睦まじく  
貴子




Let's
  おしゃべりクッキング俳句

 
チョコレートとは?

 チョコレートは、カカオの種子を発酵・焙煎したカカオマスを主原料とし、これに砂糖、ココアパウダー、粉乳などを混ぜて練り固めた食品です。略してチョコとも言います。チョコレートという呼び名は英語でフランス語のショコラという呼び名も日本では良く使われる名称です。固形のチョコレートはイギリス人の考案により出来たと言われていて、それまでは、チョコレートと言えば飲み物を意味していました。
 又、最近流行りの生チョコは、日本の横浜が発祥と言われ、甘くてとろけるような柔らかさが最高ですね。

 

Let’s おしゃべりクッキング!!!


チョコレート・トリュフの材料


★★
★チョコレート・トリュフ★★


板チョコレート・・・・・100g
チョコレートクリーム・・・・・30〜40g

生クリーム・・・・・約40g
チョコレートパウダー・・・適量

ラム酒・・・・・・少々


チョコレート・トリュフの作り方


1 ボールに入れた板チョコを熱湯で溶かし、とろとろになったところにチョコレートクリームを入れて
  よく混ぜる。

2 ボールにバターと塩を入れ、泡立器で柔らかいクリーム状に練り砂糖を2〜3回に分けて加え、
  よくすり混ぜる。

3 そこへ生クリームを泡立てて入れる。この時、分量はお好みで、柔らかくなりすぎないようにす
  る。そこにバニラエッセンスを混ぜた卵を2〜3回に分けて加える。


4 香り付けにラム酒を入れる。

5 ボールからスプーンでトリュフを一つ一つ丸くなるように掬い取る。

6 丸く型を取るようにしてチョコレートパウダーをまぶす。バットやお皿の上にパウダーを敷いて転
  がすようにするとよい。

7 丸くボール型のトリュフが出来たら、くっ付かないように、冷蔵庫で3〜4時間以上冷やす。固まっ
  たら出来上がり。


                       
            
             バレンタイン溶けて固めて夫(つま)のため
     貴子