おしゃべりケーキ物語

本文へジャンプ

新刊「おしゃべりケーキ物語」
著者:上野貴子
文藝書房より刊行


●エッセイ

1お正月料理は控え目に
2トリュフで深める夫婦の愛
3春色のお菓子を求めて
4待ちに待った苺姫の到着
5爽やかな風に乗って青林檎
6枇杷の実る庭で
7南国の甘い贈りものマンゴー
8大地の恵みひと粒の巨峰
9ほくほくのお月見タルト
10梨のあれこれ
11ハローウィンには南瓜のケーキ
12柊の実を灯し



★★★句の抜粋★★★


おしゃべりケーキ物語・著上野貴子


5爽やかな風に乗って青林檎    


 このところ、地球の環境に、何か、異変にも似たような変化が、本当に、起きつつあるのでしょうか?
 暖かくなったかと思うと、なんだか、じめじめした雨の日が続き、春だと思うと、冬のように、寒い日がやって来たりと、そろそろ、ただ事ではないと言われている、地球の温暖化とやらは、確かに、じわじわと現実的な問題なのでしょう。
 そんな不安定な気候の毎日ですが、暦は、五月ともなれば、いやおうなしに、夏になります。
 五月の風は、日増しに爽やか、環境問題など、忘れてしまいそうです。
「そんな、風かおる五月のケーキは、さてさて、いったい何にしましょう」
 苺の可愛いタルトの次は、そろそろ夏らしいフルーツを探したいものですが、夏のトロピカルフルーツには、まだまだあまりに早い感じです。
 マンゴーやパパイヤ、バナナにメロンと、真夏は、フルーツの季節。
 五月は、すでに暦の上では夏ですが、まだ、トロピカルフルーツをケーキにするには、気温が低すぎます。
 こんな時に、初夏の爽やかな風に乗って、どこからともなくやって市場に出回って来たのが、そうです。案外と、普段は目に付かない、秋の林檎に遠慮がちな、青林檎だったのです。
 なにげなく並ぶ青林檎から、ほのかに香る、爽やかな甘い香りは、実りの秋の果物、真っ赤な林檎とは、また一味違い、丸ごとかじってみると、
「サクッとした歯ざわりで、とっても甘酸っぱい味がします」
 青林檎と言うと、林檎がまだ実りたてで、小さな姫林檎のような小粒のものかと想像される方も、多いかと思います。
 ところがこれは、そうではなく、青林檎と言うのは、そもそも、そのもの自体が、林檎の種類で、小さな実の頃から、大きく育ち、熟したものまで、すべてが、青いままの林檎の種類なのです。
「当たり前でしょう」
 と思われる方も、いらっしゃるでしょうが、これが以外と、言われれば解る、当たり前のようでいて、解っているつもりが、言われなければ解らない。勘違いしやすい季節のフルーツの難問なのです。
 うっかり、ただの林檎の、小さな姫林檎かと思ってしまうことも多くて、特に、イザ俳句の句材にしようと考えてみると、つい、子供の林檎のように想像してしまい、
「まだ春浅い、秋田の林檎畑から、小さいうちに、無残にも、もぎ取られて来たのかな?、なんと、可愛そうなお話なの かな・・・」
 などと想像したりしますが、ところが、これは、そうではなく、日本各地で取れる、もともと青い色をした品種な訳です。
 そして、この青林檎は、青い色あいの持つ、爽やかさとともに、初夏の頃から市場に出回り、真っ赤な林檎が熟すよりも、ワンシーズン早く、青春の思い出を彷彿とさせるような、爽やかな、青い色に完熟する果物なのです。
「まさしく、これは、風かおる五月に、ぴったり!」
 もう今月のケーキの材料は、これしかありません。爽やかな、青い果実の、若々しい味を、タルトに焼きこんで、皆さんで堪能しましょう。
 林檎が、いつの頃からか、日本の果物の代表でもあるはずなのに、その、季節を失い、赤いものから、青いものまで、大きさも、さまざま。そして、今では、林檎の木箱なんぞは、殆ど見かけることも無くなりました。
 これは、温暖化のせいでもない、紛れもなく、人間のわがまま、そのものでしょう。
「大好きな林檎だから、何が何でも、一年中食べたい」

「いつでも食卓に手軽に手に入れば・・・・」
 とそんな、人間の傲慢さが、時を忘れ、季節を無くしてしまうのかもしれません。
 もしかしたら、最近問題になっている、温暖化の環境問題も、そんな、どうどう巡りが、何よりの原因なのかもしれません。
 アダムとイブが、林檎を食べてから、この地球は、変化し続けて、いったい、どこまで、エスカレートしてしまうのでしょうか?今や人類の謎は、国境を越えて、地球を越えて、果ては、宇宙までも、越えてゆくのでしょうか?まったく、人の世の謎は、果てしなく続くものです。
「な〜〜んて」
 そんなことを考えさせられる、この青林檎。
 ケーキの材料としては、少し酸味があるので、このほろ苦い、青春の味を、軽く水煮にしたりして、工夫するとよいでしょう。
 焼き菓子の材料として使う時以外には、軽い塩水に漬けるくらいで、赤い普通の林檎と、まったく同じです。
 この爽やかさを逃がさないように保つには、
「瑞々しい潤いが、何より肝心かな〜〜〜?」
 何だか、お肌のお手入れのようですが、
「ケーキ作りは、中身が肝心ですから、手を抜かないように、じっくりと、焼き上げなければ・・・・」
 それでは、このティーHAIKU句会の結果は、次回(おしゃべりHAIKUの会報)をお楽しみに・・・・・





                        青林檎乗せて四苦八苦タルト菓子   貴子
                           (句会ではこの句が点を取とり好評でした。)


Let's
  おしゃべりクッキング俳句

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

追熟って何?

 果物を買って来て、その日に食べようとしたら、まだ硬くて美味しくなかったという経験はありませんか?収穫後に、一定時間貯蔵することで、完熟させることを追熟(ついじゅく)といいます。
 まだ硬い果物を買った場合は、常温で数日置くだけでほとんどが追熟します。追熟には基本的に温度は15℃〜20℃位で風通しのよく直射日光を避けた場所がよいとされます。



おしゃべりHAIKUの会(俳句)




 
Let’s おしゃべりクッキング!!!


★★
★青林檎のタルト★★


青林檎のタルトの材料

 

ビスケット 21Cm型                                           

 

バター・・・・・80g                             

塩・・・・・少々

薄力粉・・・・・160g

砂糖・・・・80g(お好みで調節)
卵・・・・・25g約1/2個     

バニラエッセンス・・3〜4滴 

 

アーモンドクリーム 21Cm型 

 

バター・・・・80g

砂糖・・・・・80g(お好み調節)

卵黄・・・80g

アーモンドパウダー・・・100g                         

  ベーキングパウダー・・・小匙1/

デコレーション・・・・青林檎約2個。杏のジャム適量。アーモンドスライス適量。粉砂糖少々。

 

ビスケットの作り方


冬林檎タルトのビスケットの作り方を参照。


アーモンドパウダーの作り方

 

下準備

バターを柔らかくする。

卵をとき、バニラエッセンスゼ適量入れます。

薄力粉をベーキングパウダーと混ぜ、振るって置きます。

 

作り方

 

1 バターを溶かし練って、塩を少々ふるって泡立器で混ぜ、砂糖を2〜3回に分けすり混ぜ、よく混ざったら卵をやはり2〜3回に分けてよく混ぜます。

 

2 アーモンドパウダーを加え、泡立器でクリーム状になるまで、充分に混ぜ合わせアーモンドクリームの生地を作ります。

 

3 冷やした生地をタルト型に合わせて敷き、底にホークで穴を空け、その中にアーモンドクーリームの生地を流し入れ、カードで表面を平らにします。

 

4 青林檎の皮を剥き、月型に切り生地の上に並べます。干フルーツがあればお好みで適量乗せます。

 

5 型ごと170℃のオーブンで約40分金網で焼きます。

 

6 焼きあがったら杏ジャムを塗り周りにアーモンドスライスを飾りその上へ粉糖をまぶし、冬林檎のタルトケーキの出来上がりです。